トーキョーサンドウィッチ

大阪出身 東京在住26歳 羨望と怠惰に挟まれて、今日も生きています。 Twitter : ry0oooooo0ta

トイレが流せない

不可解でかつ不愉快な話なのだが、最近我が家のトイレが流せない。物心ついた頃からウォシュレット推しの僕は、毎日4度や5度では聞かないくらいに激しく尻に温水を注ぐなど、トイレにお世話になっているのだが、我が家ではどうも、そのトイレをうまく流すことができていないみたいだ。

 

最初の気づきは2〜3ヶ月ほど前であっただろうか、妻さんから「トイレ流してないよー」と言われたこと。うん、なんか流れていなかったのだろう。トイレは流さないままにも僕は、その話を軽く聞き流していた。普段からあまり他人の声に耳を傾けない僕であるが、「流れてない」「また流してない」「汚い」等とたびたび言われるようになり、ついに聞き流すには難しい程度にお小言を重ねられるようになった。
しかしだ。僕は生粋のウォシュレッターであり、いわばウォシュレットの匠である。そんな匠がいわば商売道具であるトイレを流せていないとはにわかに信じがたいし、信じたくはない。そんなことより5歳児くらいで卒業して置いてほしいミスを重ねているらしいことに、激しい羞恥をくらいながらここ最近の日々を過ごしていた。
 
ここでせっかくなので僕のウォシュリストぷりについて触れておきたい。来年から居住することになっている新居のオプションを選ぶ機会があったのであるが、予算に余裕のない僕は極めて最低限の設備を整えることにした。それは床下暖房でも食器棚でも、ましてや洗面所のタイルでもない。我々がオプションとして整えたのはたった一つ、ウォシュレットをハイグレードにすることであった。具体的にはウォシュレットのリモコンをシュッとさせた。(ウォシュレットだけに。シュッ。)
イメージがつきがたい人のために説明しておくと、シュッとしたウォシュレットとは、トイレ一体型のサイドアームみたいなタイプでなく、壁リモコンタイプであり、そのまた壁リモコンタイプ界隈においてもとても洗練された細長い直線を採用したモデルとなっている。並びはおしり・おしり(弱)・ビデ・止 を基調としつつ、上段にボリュームボタンを採用。カラーはシルバーで生活感を排除。素材もステンレスでクールな印象を与えている点もぬかりない。全く無駄がなく過不足のない、まさにウォシュレット界のiphoneとも言うべき最高にシュッとしたウォシュレットリモコンである。これにより、かけがえのないウォシュレットタイムをシュッとした気分で迎えられることができる。最高である。
また、匠から1つ言っておきたいことがある。よく、水量を最大にしていることに文句を唱える輩がいるが、彼らは全然わかっていない。ウォシュレットは最大水量こそが善であるからだ。ヒクヒクしながら利用するのがとてもよい。僕は会社のトイレで毎日のように用を足している。朝会社に行ってメールチェックをしては個室に入り、スマホ片手に昼ご飯を食べ終わってからもまた個室に入り(そしてこのタイミングは混んでいることが多いので、5つ上の階のトイレを用いることが多い。)帰宅前のもう一踏ん張りになりがちな19時前後にもまた個室に入り、それぞれの個室に置いて水量を最大にしてくる。これが自宅のトイレを流せないウォシュレットにこだわりを持つ男のせめてものプライドなのだ。
 
家でトイレを流せていないことに疑いを持ち続けている理由としては、会社のトイレに置いては毎回、座面後部の水滴を拭き取ることに気を使っているからだ。さまざまなトイレに入るだけに座面後部の水滴には嫌な気持ちになることが多い。その水滴の元がなんであるかを気にしだすとそれはもうモザイクをかけたくなるから割愛するが、ぼくは日課に座面後部の水滴を拭き取ることまでを付け加えている。たまに一度流して立ち上がってから気づくことがあるが、その時はご丁寧にもペーパーを手に取り拭き取り2度流す。一度めの流したあとに時間が空くため肛門筋を緩めてしまった先頭待機者には予期せぬフェイントとなってしまい申し訳はないが、とはいえ大事なことなのでぼくはきちんと拭き取るということを家の外においては徹底している。
 
極めてサイドストーリーが長くなってしまったが、ここまでして気にしている僕がなぜ家でトイレを流せていないのかが甚だ疑問である。つい先週の妻さんが沖縄に行っているタイミングを利用してマカオに旅行に出かけたときのことだ。そのように週末の家を空にするからにはそれなりに緊張して家を後にしたのであるが、このとき鍵を挿しっぱなしにして出て行ったことが管理会社からの電話で発覚した。いくら平和ボケした日本だとはいえこのミスはなかなかに痛い。何より鍵を挿しっぱなしで旅行に出かけてしまうというそのシチュエーションがどう考えてもありえないくて、人としての欠陥を感じる。管理人さんが挿しっぱなしのポストに入れて置いてくれたとのことで一安心したものの家が荒らされていないか心配ではあった。(ということをマカオのカジノで負けてしまったことの言い訳にしておきたい。)不幸中の幸い、先に家に帰った妻さんからは「家は何もなかった」との報告があった。安心。だがその安心も束の間、さらにLINEが届く「トイレ流れてなかった」と。2日間ほどこの夏場にトイレが流れていなかったことも辛いが、そろそろトイレが流せていない自覚が出てきていたところに傷口に塩を塗られたようでより辛かった。そんな辛さを紛らわすための「泥棒さんが我慢できずトイレだけして帰ったのかもね」という渾身のボケも「そんなわけないでしょ」と一蹴され、余計に惨めな思いとなり自分の存在もろともに流して欲しかった。
 
そしてまた今朝も「トイレが流れていない」との報告を賜った。僕はおしゃれ気取りのトイレが流せないただのうんち野郎だということを、今改めて自認した。